2020.01.07 ハムストリング・ランニング
マラソンのためにハムストリングを鍛える理由
■マラソンはハムストリング鍛えてこそ速くなる!?
最近ではマラソンやランニングにも筋力が大事だということが分かってきています。
マラソンのトレーニングについて調べてみると『マラソンに必要な筋トレ』という情報も多く見られました。その中でも一番注目してもらいたいのがハムストリングと臀部の筋肉だと考えています。
なぜそんなにハムストリングに注目してもらいたいのかをここで説明していきます。
~長距離のパフォーマンスを決める要因は?~
まず長距離選手に必要な能力は何でしょうか?
いろんな要素があるとは思いますが、ざっくりとこの3つに分けられるのではないでしょうか。
①全身持久力、心肺機能
ランニングなどの長時間の運動は外から酸素を取り込みエネルギーを生成することで可能になります。ランニングが有酸素運動といわれているのはこのためです。『1分間にどのくらいの酸素を取り込めるか』という指標を使って示されることが多いです。この値を最大酸素摂取量(VO2MAX)と言います。この指標を測定するには専門の施設での測定が必要となります。(大学の時に経験しましたが勝手に動くトレッドミルの上を限界まで走るという拷問みたいな測定をするのでものすごくつらかったです(-_-;)…)
最近ではランナー向けの施設などでVO2Maxを測ることができるところがあるみたいです。また簡易的にGARMINでも値が測れるみたいですね☆どうやって測っているんだかわからないですが…
ランニングブームに合わせてどんどん進化していきますね♪
②筋持久力
筋肉を動かし続ける能力のこと。一定の負荷をかけた運動をどれだけパフォーマンスを落とさずにやり続けることができるかというものです。レースの後半に足が動かなくなったりするのはこの能力が弱いからだと考えられます。
③筋力
筋肉がどれだけ強い力を出せるかというもので簡単に言えばどれだけ重いものを持ち上げられるといったような能力です。一般的には筋力は短距離やウェイトリフティングのようなパワー系の種目に必要な能力です。
①②の二つは長距離・マラソンに関係しそうなのは明らかなように見えますが、③の筋力って本当に必要なのだろうか…長距離選手ってみんなスラっとしていて筋力なんて必要なさそう…
と思われがちです。
もちろん、短距離選手のようなゴリゴリの筋力が必要なわけではないですが一定量の筋力が必要であるというのは多くの研究結果で証明されています。
~データで見るハムストリングの重要性~
大学生の頃に長距離選手の筋力について調べていたので、そのデータを基にした見解を書いていきます。(論文も書いています。)
実験データを細かく見ていくと、輝かしい成績を残していった選手(成績上位)と目立った成績を残せなかった選手(成績下位)を分けたときに、大腿四頭筋(ももの前)と、ハムストリング(ももの後ろ)の筋力について大きな違いがみられました。
どんな内容だったかというと…
①大腿四頭筋の筋力
成績上位<成績下位
②ハムストリングの筋力
成績上位>成績下位
③大腿四頭筋に対してのハムストリングの筋力の割合
成績上位≫成績下位
*筋力自体は四頭筋のほうが強いため四頭筋を100としたときのハムストリングの割合がどの程度かで比較しています。成績下位群は40~50%だったのに対し成績上位群は65~75%でした。
というような結果が得られたのです。
つまり…
成績下位の選手は四頭筋の力があるのにハムストリングが弱い。
成績上位の選手は四頭筋はそれほどでもないが、ハムストリングが抜群に強い
これまでも長距離選手にも脚の筋力が大事だというのは論文が発表されていましたが、ただ筋力が強い方が速い。というところにとどまっていて、具体的にどの筋力の方が必要かと言うのがなかったので、ハムストリングの筋力が関係しているというデータは大きな発見でした。
このデータを発見してからランナーにはハムストリングの筋力強化を指導するようになりました。
*ちなみに成績下位とは言っても高校では全国に出ているような強者たちです。なので一般の人たちよりも全体的に筋力は強いです。その中でさらに上の成果を収めるていた人たちは四頭筋よりも圧倒的にハムストリングが強いということでした。
~どうしてハムストリングが大事なのか~
なぜ成績が良かった選手のほうがハムストリングが強く、成績を残せなかった選手は四頭筋が強かったのか?
練習自体には大きな違いはなかったはずなので、おそらくそれぞれに特徴があったのは
『ハムストリングのトレーニングを意識的にしているわけではなく、強くなるような走り方をしていたから』
という考えに至りました。
ランニングは地面に足をついてから離すまでの立脚期と足が離れてから前に運ぶまでの遊脚期という二つの局面が存在します。前に進むために地面に力を伝えられるのは立脚期のみです。なのでこの立脚期の場面について考えてみます。
◆成績下位のランニングフォーム
①前に振り出した脚をそのまま接地すると、足の着く位置が体の中心線より前に来て大腿四頭筋でこの接地の衝撃を受け止めます。この衝撃を受け止める働きは、前に進む動きに対して『ブレーキの力』として働きます。さらに四頭筋で受け止めきれなかった分は膝を曲げて衝撃を吸収します。
②接地の衝撃を大腿四頭筋で受け止めきれなかった分は膝のクッションをつかうことで和らげます。そのため脚が体の真下に来た時に大きく膝が曲がった状態になります。膝が大きく曲がるので重心が下がり腰が落ちた状態になってしまいます。
③そして、地面を蹴ろうとすると、その曲がった膝を伸ばすように蹴りだすことになります。この蹴り方をすると膝を伸ばそうとしているのでその力は上方向に伝わってしまい、前への推進力よりも上に上がる力が働きます。そのため体の上下動が大きくなります。
こちらは全体的に、膝を主体にしたランニングフォームとなっています。
このフォームは常に大腿四頭筋に強い負荷がかかっています。この強い負荷が与えられていたことが成績下位の群の大腿四頭筋の筋力が強く出た要因だと思います。
もともと大腿四頭筋は瞬発力はありますが持久力がないので、このフォームでランニングを続けているとどんどんと疲労がたまり後半足が動かなくなってしまいます。さらに、強い力で動かし続けているために関節への負担もかかり怪我のリスクも高まってしまいます。
◆成績上位のランニングフォーム
①まず足を振り出してから接地までの間にハムストリングを使って脚をひきつけます。そうすることで接地時に身体の中心線に近い位置での接地が可能となりブレーキを最小限に抑えています。
②ブレーキを抑えているので膝を大きく曲げる必要がないため、足が体の真下に来た時にも腰の位置が高く保てます。
さらにここから地面を蹴るときにも膝を伸ばすのではなくハムストリングで強く後ろに蹴ることができるので、力が前の方向に伝わり推進力の得られた走りになります。膝の屈伸がないので体の上下動も少なく無駄のないランニングフォームになります。
つまりこちらのフォームは股関節の運動が主体となっています。
股関節の伸展運動(脚を後ろに引く)はハムストリングを使っているので成績上位の群はハムストリングの筋力が高い値を示していたのだと思います。ハムストリングは大腿四頭筋に比べ持久的な運動が得意なので、ハムストリングを主体とした走り方が好成績につながっているのだと考えられます。
また測定はしていませんが同じく股関節を伸ばす働きのある臀部の筋肉も成績上位の選手は筋力が高いと推測できます。
~まとめ~
■成績下位群のランニングフォームの特徴
①接地で膝が大きく曲がる
②重心、腰の位置が下がる
③体の上下動が大きい
④膝が主体
↓
大腿四頭筋を使うため疲れやすい
重心の位置と頭の上下動が大きいです。
■成績上位群のランニングフォームの特徴
①接地が体の真下に近い
②重心・腰が高い
③身体の上下動が少ない
④股関節が主体
↓
ハムストリングを使うので疲れにくい
頭の位置が変わらずに腰が高く保てています。
以上のような理由からなぜハムストリングが大事なのかがお分かりいただけたでしょうか?
ランニングを楽しく継続的に行うためにもこちらの記事が少しでも参考になれば幸いです。
当院ではランニングフォームの改善を目的とした施術なども行っています。
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